2012年05月13日
私の家族/ハナ
私の家族の、いや、近所のアイドルとも言うべき犬がいた。「ハナ」という名前の、雑種の勝ち気な雌わんこだ。
僕が物心つくと同時に、我が家にやって来た。出先から帰ってくると、ちょこんとお座りして、しっぽを振って出迎えてくれた。ハナの散歩を僕が任されるようになったのは、小学校高学年のときだ。毎日毎日、見た目によらず力の強いハナに引きずられるようにして、散歩に行った。
僕が散歩をするようになって、ハナが変わったことは、川に入るようになったことだ。体を洗おうとすると、首輪を外してまで逃げ出していたハナが、夏の暑い時期には、いつも川に飛び込むようになった。
数年経ったある日、映画を観に出かける前に、いつものようにハナを連れて散歩に出た。11月の夕方、冷え込んでいたのに、なぜか、ハナは川に飛び込んだ。ちょっと不思議に思ったが、あまり深く考えずにその日の散歩を終えた。
次の日。夕方、患者で混む耳鼻科にいると、母から「ハナの様子がおかしい」と連絡があった。急いで家に帰ると、ぐったりしたハナの姿があった。ハナは僕の姿を見ると、よろよろ起き上がって、いつものお座りをした。とりあえず、頭を撫でてやることしかできず、母に「父さんが帰るまで様子を見るので、とりあえず耳鼻科に戻り」と言われ、何かあったら、また連絡するように行って家を出た。
次に電話を受けて帰ったとき、ハナは動かなくなっていた。ハナが倒れていたのは、車庫の入り口だった。家族が車で帰ってきたときに、ハナがいつもしっぽを振って、出迎えにきていた場所だった。忌わの際まで家族を出迎えようとしていたのか、と思うと、また泣きたくなった。
翌日、火葬業者が遺体を引き取りに来たときは、兄の友達までハナの見送りに来てくれた。みんなが泣いていた。とくに自分は家族を失うという経験は初めてで、ショックは大きかった。死んだ原因は、高熱だったそうだ。だから前日、冷え込んでいたにもかかわらず、川に飛び込んでいたのだと思うと、その時、異変に気づいていれば、と後悔が募った。
いま、ハナは庭の隅のハナユズの下に眠っている。ハナの名前が入った木だ。ちょこんと置かれた墓石代わりの花瓶が、帰ってきた家族をお座りをして出迎えていたハナの面影を感じさせる。
僕が物心つくと同時に、我が家にやって来た。出先から帰ってくると、ちょこんとお座りして、しっぽを振って出迎えてくれた。ハナの散歩を僕が任されるようになったのは、小学校高学年のときだ。毎日毎日、見た目によらず力の強いハナに引きずられるようにして、散歩に行った。
僕が散歩をするようになって、ハナが変わったことは、川に入るようになったことだ。体を洗おうとすると、首輪を外してまで逃げ出していたハナが、夏の暑い時期には、いつも川に飛び込むようになった。
数年経ったある日、映画を観に出かける前に、いつものようにハナを連れて散歩に出た。11月の夕方、冷え込んでいたのに、なぜか、ハナは川に飛び込んだ。ちょっと不思議に思ったが、あまり深く考えずにその日の散歩を終えた。
次の日。夕方、患者で混む耳鼻科にいると、母から「ハナの様子がおかしい」と連絡があった。急いで家に帰ると、ぐったりしたハナの姿があった。ハナは僕の姿を見ると、よろよろ起き上がって、いつものお座りをした。とりあえず、頭を撫でてやることしかできず、母に「父さんが帰るまで様子を見るので、とりあえず耳鼻科に戻り」と言われ、何かあったら、また連絡するように行って家を出た。
次に電話を受けて帰ったとき、ハナは動かなくなっていた。ハナが倒れていたのは、車庫の入り口だった。家族が車で帰ってきたときに、ハナがいつもしっぽを振って、出迎えにきていた場所だった。忌わの際まで家族を出迎えようとしていたのか、と思うと、また泣きたくなった。
翌日、火葬業者が遺体を引き取りに来たときは、兄の友達までハナの見送りに来てくれた。みんなが泣いていた。とくに自分は家族を失うという経験は初めてで、ショックは大きかった。死んだ原因は、高熱だったそうだ。だから前日、冷え込んでいたにもかかわらず、川に飛び込んでいたのだと思うと、その時、異変に気づいていれば、と後悔が募った。
いま、ハナは庭の隅のハナユズの下に眠っている。ハナの名前が入った木だ。ちょこんと置かれた墓石代わりの花瓶が、帰ってきた家族をお座りをして出迎えていたハナの面影を感じさせる。
Posted by 芸短ネット演習 at 06:31│Comments(0)
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