2012年07月13日

日本語表現I期末課題 

「つづけてよかった」
5月に、わたしはそれまでしていたバイトを辞めた。2年半。我ながら、よく続け
たと思う。
高1の私は、憧れだったパン屋さんのバイトに落ち、自暴自棄になっていた。そん
な時、友人が見つけてくれたのが、このバイト先だ。飲食店なんて、忙しいし、汚
いし、第一、広告にも出さず、店の前に【求人募集】と紙を貼っているだけの小さ
なお店なんて、と、最初はあまり乗り気ではなかった。しかし、その頃の私にバイ
トを選んでいる余裕などなく、嫌になったら辞めればいい、と軽い気持ちで始め
た。
 イケメンの店長に出会い、舞い上がったのもつかの間、バイトは想像以上にきつ
いものだった。とにかく要領の悪い私は、1ヶ月たっても2カ月たっても仕事を覚
えることができない。そしてなにより、副店長のAさんがとても怖かった。目つきが
悪く、ぶっきらぼうなAさんの前では、緊張して失敗ばかりした。悪循環だ。仕事終
わりに「がんばっているのはわかるけど。」と疲れた声で言われると、怖くて、申
し訳なくて、ひたすら謝るしかなかった。それでも続けたのは、ただ、私に辞めた
いと言いだす勇気さえなかったからだ。
 半年ほどたち、ようやく仕事内容も覚え、バイトを続ける自信もついてきた。Aさ
んとも、その頃からだんだん親しくなっていった。いつの間にか呼び捨てで呼ばれ
るようになり、仕事中にも関わらず、平成ジャンプの知念くんがかわいい、だの、
夢に私が出てきた、だの、もういい年なのに彼氏が結婚してくれない、だの本当に
たわいもない話をしてくれるようになった。
 2年半は、あっという間だ。バイト最終日、Aさんは恥ずかしそうに“ハグ”をし
てくれた。私は、体育祭であれ卒業式であれ、一切の「泣ける行事」で泣いたこと
がない。しかし、その時は急に涙がこぼれそうになり、どうすればよいのかわから
なかった。感動とは少し違うかもしれない。もっと複雑な、いろんな感情がいりま
じった、初めて味わう気持ちだった。



Posted by 芸短ネット演習 at 23:36│Comments(0)
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