「日本語表現１（下川正晴）」のページ

　「うわ～、タイミング、わりぃわ～」。授業の課題で、「家族について作文を書く」と言われた時、私はうめいた。「家族史上最強」のバトルが、繰り広げられている最中だったからだ。
　父VS母、父VS母VS姉。時々、参戦する私。父は私が高校に入学した年の夏から、単身赴任で東京に住んでいる。わざわざゴールデンウィークで帰ってきたのに、この悲劇だ。父は顔がほんの少しだけ「織田裕二」に似ている。。本当にほんの少しだけ。あまりガツガツ話をするタイプではなく、話をひたすら聞いてくれる優しい父。
　母は「眼鏡市場」のＣＭに出ている、岡江久美子に似ている。このＣＭ限定の「岡江久美子」。父の「織田裕二」とは違い、そっくりだ。小中高とテニスをしていて、九州大会に出場するほどの腕前だったらしい。しかし今では、階段を登るだけで息が上がり、めまいがする。昔の面影は一つもない。
　姉は四つ年上で、細くて背が高く、わりと美人。近所の人や親戚に、「あんたたち、ほんとに姉妹な？」と言われるほど、私とは正反対だ。でも、声はそっくり。仕事が休みの日には、買い物に連れて行ってくれて、色々と買ってくれる優しいお姉ちゃん。
　普段、あまり喧嘩をしない家族だけど、言いだしたら止まらない。今回は、父と母はケンカ以外には、全く話さないほど険悪だった。
　ゴールデンウィーク最終日。朝起きたら、父と母はいなかった。バラバラに行動しているのかと思いきや、数時間後、「史上最強バトル」の二人が、仲良く帰ってきた。話をするために、二人でドライブに行っていたら、たまたま国東の縁結び神社についたという。それが仲直のきっかけになった。
　単純だけど、喧嘩中にたまたま、縁結び神社に着くのは何か縁がある。そういう意味だと思う。父母が離れ離れにならなくて、良かったな。ほっとした。私も結婚したら、極力ケンカはしたくないけど、父母のように「ケンカするほどなかが良い」夫婦もいいな、と思う。