「日本語表現１（下川正晴）」のページ

　私は自分勝手な父が嫌いです。家族の大黒柱として、家族を背負っているにもかかわらず、自分のやりたい事ばかりをします。いつも仕事が続きません。すぐに辞めてしまいます。そんな父に、私はあきれています。
　母に何度も「離婚して」と頼んできました。しかし、母はいつも「う―ん。でもね…」と言って、話を曖昧に流します。父は、母にいつも激しい口調で、指図します。母は何を言われても、我慢しています。そんな父母がいやでいやで、たまりません。
　そもそも、どうして母はこんな父と結婚したんだろう。私だったら、絶対にこんな男を選ばないし、すぐに離婚する。
　この家族が誕生したのは、私のせいでした。母は私を身ごもり、父と結婚することを決めました。それを知った時、とてつもないほどの罪悪感を覚えました。私のせいで母が辛い思いをし続けているんだ、と自分を責めました。そんな自分と家族から逃げたくて、高校生の頃は遊んでばかりで、毎日、家にいませんでした。
　しかし、そんな私を母は愛してくれました。それどころか、私を責めることなく、「いつもケンカばかりしてごめんね」と謝ってばかりでした。私はそんな母に、何もしてあげられない自分が、悔しくてたまりませんでした。
　父も母に冷たく、夫としては最低な人かもしれないけれど、なんだかんだで、もう母とは１９年も一緒にいます。両親を見て、これが腐れ縁なのかな、と思うようになりました。
　何より、父は私の事を一番に考えて、行動してくれます。私の一番の良き理解者です。
　家族が嫌で、逃げてばかりいた高校時代でしたが、一人暮らしを始めて、家族と離れてみると、とても家族を恋しく感じます。家族はみんな、私を愛してくれています。私のせいでこの家族は出来たけれど、今はそのことをプラスな考えられるようにりました。両親や兄弟が私を愛してくれているように、私も心から家族を愛しています。