高校卒業して、近所で見つけたお店、そこはお弁当屋さんで、よくお母さんがご飯
を作れない時にお世話になっていた。人生初バイト、初面接に緊張の連続だった。
お金を稼ぐことが大変なのは、お母さんやお父さんをよく見て知っていたけど、見
たりすることと体験することは全く違うのだとその時始めて気付いた。店長は、優
しそうなおばちゃんで、人手不足だったためすぐに面接も受かり次の日からバイト
の毎日が始まった。新入りの私に任される仕事はごく単純で簡単なものばかりだっ
た。そのお店は夜の方が忙しく、私は昼に入ることが多かったので、修羅場のよう
な忙しさを体験することはなかったが、お昼のピークは忙しく、プチ修羅場という
感じだった。そんな所で新入りの私は邪魔者になってしまい、肩身の狭い気持ちに
なることも多かった。指示されていた仕事がお昼のピーク前で終わったりしてしま
うと、バイトの先輩たちは全員注文されたお弁当を作り始め、仕事が終わって次に
何をすればいいのか聞けないのだ。その先輩たちが忙しく仕事をしているのを見る
と、邪魔になると思った。その日もその状況に出くわしてしまって、どうしようか
迷っていた。先輩に話しかけようとしてやめた。その先輩は私が声をかけられずに
いるのを、サボっているのだと他の先輩に話していたのだ。信頼していた先輩に裏
切られた気分になって、悲しくなった。そんなつもりではなかったのに。年の離れ
た人の多い職場では、気が合わないのかもしれない。先輩の陰口に悩みながら、一
か月が経った。重い足取りで職場に出勤すると、店長に声をかけられた。「はい、
これ。今日も頑張ってね」。それはお給料だった。光ってなんかいなかったけど、
私には光っているように見えた。この一カ月、私はちゃんと頑張れていたんだ。私
は胸が熱くなり、更衣室で小さくガッツポーズをした。その日の仕事には、笑顔で
取り組むことができた。