私の家族/お父さん

芸短ネット演習

2012年05月13日 01:23

 顔、性格、考え方、私はお父さんとよく似ている。そして、それらのほとんどが、私のコンプレックスになっている。私とお父さんは、まるで磁石のように、しょっちゅうはじき合っている。
 私は自分の性格が嫌いだ。とても短気で、すぐケンカ腰になり、機嫌が悪くなると、よく嫌味なことを言ってしまう。だからもちろん、お父さんとも馬が合わない。こんなのが家に二人もいて、お母さんは本当に大変だと思う。高校の頃は、十回中八回は口論をしていた気がする。なぜ、お母さんはこの人と結婚したのだろう、と疑問に思うことも稀ではなかった。
 しかし最近、その理由が分かったかもしれない。私は、ついこの前まで受験生だった。いろんな壁に何度もぶつかって、乗り越えたものもあれば、いまだに壁として残るもの、更なる壁もできてしまった。自分なりに勉強しているはずなのに、それ相応の結果が出ないはがゆさで、塾の帰り道に一人で泣いたのは、一度や二度ではない。「自分が子供を生んだら、自分のように辛い思いはしてほしくない」とまで考えるようになっていた。
 そんなある日、珍しく、お父さんと長く話をする機会があった。その時、お父さんの言った言葉が忘れられない。「俺は苦労してきた。社会は本当に厳しい。お前にはたくさん苦労してほしい。たくさん辛い思いをしてほしい」。私は同じことを自分の子供に言えるだろうか。しかし、その言葉には親の優しさを感じた。
 唯一、私たちが似てないところといえば、お父さんは努力家で、私はそうでないということくらいだ。私には継続する力がない。しかし、どうせなら、とことん似てやろう、と思う。子供が生まれ、挫折したときは、同じ言葉を言える親になりたい。